本稿は、米国連邦裁判所、一部のトランプ関税を差止めに係るアップデートです。
2025年5月29日、米国連邦巡回控訴裁判所は、5月28日に米国国際貿易裁判所(以下「CIT」といいます。)によって停止された関税を、CITの命令の一時的差止めにより一時的に復活させる命令を発令しました。CITの5月28日付けの命令により、トランプ政権が導入した「相互」関税(10%の全世界関税)並びに国際緊急経済権限法(以下「IEEPA」といいます。)に基づくカナダ・メキシコに対する関税(25%)および中国に対する関税(20%)が恒久的に差止められていましたが、政府がこれに控訴し、あわせて控訴審の審理中のCITの命令の一時差止めを申し立てていました。連邦巡回控訴裁判所の一時差止命令により、CITの差止命令はさらなる審査が終わるまで一時的に効力を失い、これらの関税は連邦巡回控訴裁判所が政府の控訴について判断を下すまで、即時に復活することとなります。
実務上の影響
1. 関税の復活
- 輸入者は、直ちに上記の10%の「相互」関税、25%のカナダ・メキシコに対する関税、および20%の中国に対する関税の支払いを再開しなければなりません。
- 米国税関・国境警備局(以下「CBP」といいます。)は、HTSUSコード9903.01.25(相互関税)およびその他の該当分類に基づき、関税徴収を再開します。
- CITの一時的な差止命令の有効期間(5月28日乃至29日)内に提出された還付請求は凍結され、CBPは法的な争いが終了するまでこれらの請求を処理しません。
2. CBPのガイダンス
- CBPはまもなくAutomated Commercial Environment(“ACE”)の最新指令を発出する見込みです。それまでは、輸入者は5月28日以前の輸入手続きに従う必要があります。
- CITの差止命令期間(5月28日乃至29日)に入荷した貨物については、最終判決が出た後にPost Summary Corrections(“PSC”)や異議申立てを行う必要が生じる場合があります。
3. 関税の重複適用
- 重複関税を禁止する大統領令14289は引き続き有効です。重複関税(例:セクション232関税+IEEPA関税)の影響を受けた輸入業者は、5月28日以前の輸入分について還付請求を引き続き行うことができます。
今後の見通し
本件の原告は、政府によるCITの命令の恒久的な差止めの申立てに対し、2025年6月5日までに反論を提出しなければなりません。政府の再反論期限は2025年6月9日です。その後、連邦巡回控訴裁判所は控訴審理中に差止めを維持するかどうかを判断しますが、この審理には数か月かかる可能性があります。
連邦巡回控訴裁判所が最終的にCITの判決を支持した場合、関税は再び解除され、5月29日以降に支払われた関税の返金が可能となる場合があります。逆に、連邦巡回控訴裁判所が判決を覆せば、関税は無期限に維持されることになります。
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