企業間の契約に含まれる紛争解決条項に関する交渉は、結婚前に離婚について話し合うようなものだと言われます。しかし、当事者のリーガル・チームにとっては、署名欄のインクが乾く前に、可能な限り契約書から不確実性を取り除くことが重要です。国際取引契約においては、準拠法、言語条項など、考慮すべき事項が数多く存在します。その中でも、以下の3つの問題が特に重要であると言えます。
管轄: バーゲニング・パワーのある当事者の多くは、紛争解決のために自国の裁判所を指定することを好みます。しかしながら、交渉力の強い当事者であっても、自国の裁判所を非排他的な管轄として指定することを検討すべきです。ある国の裁判所の判決を他国の裁判所で執行するには、常に困難が伴います。この問題に加えて、両方の当事者が同一国内に資産を有する可能性は低いという事実も見逃せません。非排他的裁判管轄を採用することで、当事者は自国にて訴訟を提起する選択肢を持つことに加えて、相手方が資産を有する国で訴訟を開始する柔軟性を持つことが可能になります。
仲裁: ニューヨーク条約があるおかげで、仲裁判断の他国での執行は容易になっています。しかしながら、仲裁が本当の意味で高い費用対効果を持つのは、ローンや品質、その他の日常的な商業問題など、非常に限定的な事実にかかわる紛争についてであるといえます。より複雑な紛争の場合、仲裁はしばしば訴訟と同程度の費用を要することがあります。過去には、複雑な紛争であっても、秘匿性を確保するためにしばしば仲裁が選ばれてきましたが、現在では、多くの国の裁判所が営業秘密のようなセンシティブなテーマについて訴訟を非公開で行うことを認めています。
段階的紛争解決: 訴訟や仲裁を避けるためには、これらの拘束力のある紛争解決手段を開始する前に、意見の相違を解決するための非公式な手段(多くの場合、調停)を経ることを契約で義務付けることが検討に値します。当事者間の会合と協議の期限を契約で実際に定めることは、紛争を解決する可能性のある話し合いを強制するのに有益です。調停は、拘束力はないものの、多くの場合、当事者の主張を集中させ、証拠をより真剣に検討させるのに役立ちます。当事者が和解に至らなかったとしても、訴訟または仲裁を開始する条件として、裁判外紛争解決手続の利用を契約中で強制することで、正式な紛争解決手段の利用を回避することに繋がります。
ビジネス・パーソンは通常、取引条件に合意する際に紛争解決手段について議論することを好みませんが、企業は、紛争処理のコントロールと迅速化を試みるために、管轄、仲裁、段階的紛争解決という3つのトピックについて十分に検討することが重要です。企業が最も避けるべきは、紛争解決のために徒に資源を浪費することだからです。
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