本年4月、米国国際通商裁判所(U.S. Court of International Trade)は、HMTX Industries事件で、米国政府を支持する判決を下しました。本事件は、輸入業者が、米国政府が通商法301条に基づき中国産輸入品に課した追加輸入税の一部を取り消すことを主張して提起したものです。何千件もの同種事件が提起されていますが、中でも本事件は主要事件といえます。同裁判所は、かかる追加輸入税が米国政府による適切な調査に基づき、課されたものであることを認めました。HMTX事件の判決は、連邦巡回区控訴裁判所に上訴されることが予想されますが、本件の決着がつくのは、早くても2024年中になるでしょう。それまでの間、米国に輸入される中国産製品の大半が、引き続き輸入関税の引き上げの対象となります。輸出入者が中国籍でない場合であっても同様に、輸入課税引き上げの対象となります。
米国市場は、ここ数年の間、中国産製品にとって非常に厳しい環境になっています。2019年度米国国防権限法(National Defense Authorization Act)第889条により、米国現地の業者であっても、中国の上場企業が製造する電気通信機器や監視機器を米国政府機関に供給することができません。さらに、中国はWTO(世界貿易機構)政府調達協定の締約国ではないため、欧州やアジアの他のWTO加盟国が製造する製品とは異なり、中国産製品は、米国政府が管理するバイ・アメリカン・プログラム(連邦政府による政府調達において米国産品を優遇する政策)の適用除外の対象とはなりません。同時に、米国政府は、現在、政府調達品を対象とするバイ・アメリカン・プログラムに基づく監視を強化し、低価格で米国市場に輸入された様々な中国産製品や材料に対して、引き続きアンチ・ダンピング防止税や相殺関税(countervailing duties)を課しています。
米国市場での販売を目的として、製品(または部品も含む)を調達する企業は、自社製品に中国産製品が使用された場合の影響をよく認識し、注意すべきです。他国で組み立てられたり、または完成された製品であっても、米国関税法では中国産製品とみなされる場合があります。それに気づかなかった場合は、追加輸入税やペナルティーを支払わなければならなくなり、企業の利益がむしばまれたり、米国政府機関に商品を供給できなくなったりするなど、多大な損害が生じる可能性があります。
© 2024 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。