2020年に発効した日米貿易協定(USJTA)は、米国市場における日本のサプライヤーにとって大きな進展となるはずでしたが、同年の新型コロナウイルスの世界的大流行がその順調な滑り出しに影を落としました。しかし、米国経済が回復軌道に乗っている今、日本のサプライヤーにとっては製造拠点を日本に戻すことのメリットが高まっています。というのも、USJTAのもとでは、非常に多くの日本製品が米国輸入関税撤廃の対象になっているからです。
WTO協定のもとで現在すでに米国が免税対象としている製品は、USJTAにおける免税対象にはなりませんが、それでも、製品の日本製比率を高めることが、米国市場において、日本のサプライヤーにとって有利であることには少なくとも2つの理由があります。1つは、現在中国で生産されている製品には、依然として米国の「スーパー301条」による追加輸入関税が課せられるということです。中国から米国に輸出される製品がたとえ課税対象品でなくても、301条の追加関税は課されるのです。第2に、米国が、東南アジアの主要生産国を含むいわゆる「開発途上国」で生産される製品に対して、免税待遇を復活させていないことです。つまり、米国議会が免税待遇を復活させない限り、それらの国々からの輸入品には関税が課されるのです。それに対して、「日本製」であると認められる製品はUSJTAが有効である限り免税となり、スーパー301条の追加関税も課せられません。
以上のように、電子機器やその他ハードウェアを製造する日本メーカーは、最終製品の日本製比率を高めることによって、米国への輸出関税ゼロというメリットを手にすることができるわけです。これは、米国や欧州で保護貿易の風潮が高まる中での朗報と言えるでしょう。
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