2021年9月9日、バイデン大統領は、今後も学校を継続し、継続的なロックダウンから経済を守りながら、新型コロナウイルス感染症と闘い、より多くの人命を救うことを目的とした6本柱の計画を発表しました。その1本目の柱となる「ワクチン未接種者に対するワクチン接種の促進」において、ワクチン接種を義務づけられる米国人の数を増やすために政府の監督権限その他の措置を利用して、未接種者の数を削減することに焦点が当てられています。米国におけるワクチン接種者の数が最大となるように、バイデン大統領は、職場におけるワクチン接種の義務化を指示しました。
特に、労働省労働安全衛生庁(OSHA)は、バイデン大統領の指示を受け、100人以上の従業員を雇用する雇用主に対して、(1) 従業員がワクチン接種を完全に終了していることを確認するか、または(2) ワクチン接種を受けていない全従業員に対して、毎週出勤する前に、コロナ検査の陰性結果を提出することを義務づけることを求める規則を設けました。さらに、バイデン大統領は、連邦政府機関の職員全員に対して、ワクチン接種を義務づける執行命令も出しました。また、同日、連邦政府機関に役務を提供するすべての請負業者および下請業者にもワクチン接種を義務づける第二の執行命令を出しました。請負業者および下請業者に対する接種の義務化については、2021年10月15日以降に締結されるすべての契約書等にワクチン接種に関する条項が追加されます。管轄機関において、ガイダンスや必要要件の発行が進められています。2021年9月24日(金)、連邦政府機関の請負業者および下請業者に対するワクチン接種要件に関するガイドラインが発行されました。
バイデン大統領のワクチン接種の義務化は、一部の企業にとっては、より多くの従業員に対して認可されたワクチンの接種を奨励し、事業の停滞や業務の停止を引き起こすパンデミックから自社を保護するものとして歓迎されています。一方、他の企業、特に従業員の離職率が非常に高く、必要な人材の確保に頭を悩ませている製造会社にとっては、このようなワクチン接種の義務化は、ビジネス上マイナスとなり得るハードルとみなされています。
本稿の著者がある製造会社の経営幹部から聞いた話を例にあげれば、同社には、何らかの理由で、ワクチン接種を受けないことを選んだ従業員が200人以上もいるそうです。同経営幹部は、今回のワクチン接種の義務化により、未接種の従業員の一部が辞職する可能性があり、そうなればすでに難航している人材の確保がさらに難しくなることを懸念しています。ワクチン未接種の従業員が、雇用主のワクチン接種義務規則に従わず、テキスト・メッセージを送るだけですぐに辞めてしまうこともあります。
バイデン大統領が100人以上の従業員を抱える企業に命じたワクチン接種の義務化に対抗して、24人の州司法長官は、バイデン大統領にかかる「悲惨で非生産的な計画」の再考を促すための書面に署名し、さもなければ法的措置を講じると訴えました。バイデン大統領の計画は、確実に、法的な問題に直面することになるものとみられますが、それによってワクチン接種の義務化の実施が遅れる可能性があります。しかしながら、ワクチン未接種の従業員がまだ多数いる上に、ブースター接種の必要性が注目されているため、企業は、2021年の残された期間および2022年も引き続き同様に、経営課題の一環としてコロナ対策を講じてゆかなければなりません。唯一確信をもって言えることは、新型コロナウイルスについての確実性がまったくないということだけです。
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