概要
500人以下の従業員を雇用する中小企業が、米国中小企業庁(Small Business Administration)(「SBA」)の給与保護プログラム(Paycheck Protection Program)(「PPP」)によるローンを利用する際の資格条件が拡張されました。特定の事業体が適用対象の中小企業であるか判断する際には、従業員数に基づいて関連会社の規則(affiliation rules)が適用されますが、2020年4月6日の夜、財務省が発行したガイダンスにより、事業体が雇用する500人以下の従業員が米国に在住している場合は、かかる事業体とその関連会社は中小企業とみなされ、PPPローンによる融資を受ける資格があることが明確にされました。
上記のガイダンスが発行されたことにより、外資系企業を親会社に持つ米国子会社はPPPローンの融資をさらに受けやすくなりました。ボールド体の下線箇所が更新された内容です。
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PPPローンの背景
コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES Act)の制定により、特定の中小企業(500人以下の従業員の雇用主)は、2020年3月1日から2020年12月31日までの期間にPPPローンを組むことができます。
PPPローンを検討する借り手は、その事業が該当する北米産業分類システム(「NAICS」)コードに基づく産業分類に該当し、上限を1,500人とする従業員を雇用する場合はPPPローンにより融資を受ける資格を有します。
詳細をご覧になりたい方は、2020年4月6日の夜に財務省のガイダンスと共に発行された、PPPローンに関してよくある質問事項(「FAQ」)をご覧ください。次のような事業体には融資を受ける資格があります。
- 従業員数が500人以下で、それら従業員の主たる居住地が米国にある場合(「CARES法による中小企業」)、または、
- NAICSコードに基づく産業分類に該当し、従業員数と収益に関してSBAの基準を満たしている場合(「SBA中小規模企業」)
PPPローンにおける関連会社の規則(affiliation rules)が免除されるのは、NAICSコードが72で始まる分類に該当する借り手(宿泊施設および食品サービス)だけで、それ以外の借り手は免除されません。つまりそれは、それ以外のNAICSコードに該当する事業体がPPPローンを検討する場合は、自社と(該当する場合は)関連会社の従業員数を数えてから、上記のCARES法による中小企業またはSBA中小規模企業のどちらに該当するか判断する必要があるという意味です。
しかし、FAQによると、CARES法による中小企業の場合は、関連会社の規則の適用対象となる否かの判断基準は、米国に在住する従業員の数のみです。一般的に、貴社とは別の事業体が貴社の50%以上を所有/管理する場合、別の事業体は、貴社の関連会社です。たとえば、米国会社が、外国の親会社の完全子会社である場合、その米国子会社の従業員、外国親会社の従業員、および同親会社が50%以上の所有権を有する他の企業体の従業員の人数がすべて含まれます。
最近、財務省がこのFAQを発行したものの、現在の規則や規制において矛盾が生じているため、SBAローンの貸し手の中には、米国に在住する従業員数だけを基準にPPPローンの提供に同意しない金融機関も出てくる可能性があります。
SBA中小規模企業の場合、関連会社の規則も含めた従来のSBA規則が適用され、事業体とその関連会社のすべての従業員の人数が適用対象となり、米国に在住する従業員だけが対象となるわけではありません。
FAQの詳細はこちらのリンクをご覧ください。(link)
SBAは、2020年4月2日の夜、中間最終規則(「本中間規則」)という形で指針を発表しました。詳細は、ウェブサイトをご覧ください。(link)
さらに同日、SBAは、新たにPPPローン申込書(「PPPフォーム」)を発行しました。こちらのリンクをご覧ください。(link)
本中間規則では、PPPローンの利息率は1%とし、償還期間は2年であると定められています。
PPPローンによる収入(借入金)は、次のものに充当できます。
- 給与支払いの支援(有給病気休暇、傷病休暇または家族休暇、およびかかる休暇中の団体健康保険手当関連費用を含む)
- 従業員の給料
- モーゲージ(mortgage)ローンの利息支払い
- 家賃(賃貸借契約による賃借料も含む)
- 水道光熱費等、および
- 対象期間の前に生じた他の債務
他の重要点:
- 担保および個人保証の必要条件は免除されます。
- PPPローンの返済は、最長6カ月間猶予されます。(当初SBAは、この猶予期間を1年と定めていましたが6カ月と決定しました。)ただし、返済猶予期間中も利息は生じます。
- PPPローンによる借入金を受領した後、2020年6月30日までに、借り手が条件づけられた経費の支払いに費やした金額のうち、8週間分の返済免除を受けることができます。しかし、この免除額は、解雇せずに雇用を継続した従業員の数に基づき、算出公式に従って削減されます。さらに、本中間規則では、給与支払い関連経費以外のものについては、返済免除額をPPPローンの借入額の25%までに制限すると定めています。
- PPPローンおよび返済免除の申し込みをする際には、要求される関連文書を提出しなければなりません。
増田・舟井法律事務所は、PPPローンおよび/またはレイオフもしくは人員削減に関する決定について、ならびに決定内容がPPPローンと返済免除に及ぼす影響について、各雇用主のご相談に応じております。
増田・舟井法律事務所からのアドバイス:
PPPローンの申し込みは先着順に処理されます。貴社が中小企業としての資格条件を満たし、PPPローンの申し込みを考慮なさる場合は、貴社取引先の金融機関にご相談ください。
ファミリーズ・ファースト・コロナウイルス対策法(Families First Act)、もしくは、コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES Act)あるいは、それ以外にも、障害を持つアメリカ人法(Americans With Disabilities Act)、労働安全衛生法(OSHA)、公正労働基準法(Fair Labor Standards Act)の遵守に関して、または賃金および労働時間に関する遵守事項、疾病休暇、在宅勤務規則、移民関連事項、訴訟事件の遅延、もしくは不可抗力事項の適用など商取引の契約内容に関して、ご質問がございましたら、貴社の担当弁護士または雇用/労働法/福利厚生部門の弁護士までご連絡ください。
PPPローンに関してご質問などございましたら、ジェニファー・ワトソン弁護士 (Email: JWatson@masudafunai.com)またはコーポレート/ファイナンス/M&A部門の所属弁護士までご連絡ください。なお日本語サポートをご希望の場合は、クライアント・サービス部門の徳吉(Email: Ftokuyoshi@masudafunai.com)までお問い合わせください。
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