2018年に入り、トランプ大統領は、米国への輸入品に対し以下の三つの異なる関税を課すよう命じた。
- 家庭用大型洗濯機および太陽光パネルの輸入に対する米通商法201条に基づく緊急輸入制限(セーフガード)
- 鉄鋼およびアルミニウムの輸入に対する米通商法232条に基づく関税
- 中国から輸入される特定製品に対する米通商法 301条に基づく関税
トランプ大統領が関税に関して発するこれらの様々な指示は、米国内の輸入業者や彼等と取引をする海外のサプライヤーを混乱させるものであると思われる。本アドバイザリーでは、2018年の第一四半期に発令された各関税について要約する。
洗濯機および太陽光パネル
洗濯機および太陽光パネルの輸入に対する関税は、2018年2月7日より適用となり、太陽光パネルに関しては4年間、洗濯機に関しては3年間継続される。輸入洗濯機においては、導入1年目は最初の120万台まで20%の関税が課せられ、120万台を超過した分については50%の関税が課せられる。洗濯機の部品に関しては、その輸入総数が5万個を超えると50%の関税が課せられる。太陽光パネルに関しては、導入1年目は30%の関税が課せられる。これらの関税は、段階的に廃止されるまで、毎年徐々に引き下げられる予定である。
当該関税は、世界貿易機関(WTO)に加盟する発展途上国でかつ米国の関税率表上に途上国として記載されている場合を除き、全ての国からの輸入に対し適用される。米国通商代表部(USTR)は、当該関税の影響からの適用除外を求める者を対象にするガイダンスを発表した。
鉄鋼およびアルミニウム
鉄鋼およびアルミニウムの輸入に対する関税は、2018年3月23日より適用となり、以下の国を除いた全ての国から米国に輸入される鉄鋼には25%、アルミには10%の追加関税をそれぞれ課している。
- メキシコ
- カナダ
- ブラジル
- オーストラリア
- 韓国
- EU(欧州連合諸国)
これらの国別適用除外は、各国の関係当局が米国と貿易上もしくは安全保障上の二国間協定を締結しない限り、5月1日に失効する。米国商務省は、当該関税からの製品別適用除外の申請希望をする者を対象とする手続きを公表した。輸入者は、当該関税の適用除外の要因となる
のは、売主の所在地ではなく、製品の原産地であることに留意すべきである。さらに、米通商法232条に基づく当該関税に加え、中国およびその他の特定国からの鉄鋼およびアルミの輸入に対する既存のダンピング防止関税および相殺関税は、有効であり続ける。
中国からの輸入
トランプ大統領は、制裁の対象とすべき中国製品のリストおよびそれらに課せられる輸入関税を発表するようUSTRに指示した。USTRは、およそ1300品目にもおよぶ対象候補の中国製品のリストと共に25%の予定関税を公表した。評論家達は、当該関税の影響は計り知れないものになると予測している。多数の米国の輸入業者のサプライチェーンにおいて中国が占める割合をかんがみると、影響を受ける可能性のある製品および部品を予め確認することは輸入業者にとって重要である。
なお、この第三の関税は、米国の知的財産権者を不利な立場におく中国の不公平な政策の数々を名目に課せられる。現在のところ、米国のみが中国に対して直接的経済制裁を課す動きに出たが、中国による同政策は、他の全ての国の知的財産権者も不利な立場においている。
一般特恵関税制度 (GSP)
トランプ大統領は、米国のGSPプログラムも再度制定し直した。このプログラムは、途上国を原産地とする特定の製品を無関税で輸入することを認めたものである。米国へ輸出する業者の多くは、米国輸入関税を下げるため、彼等のサプライチェーンにGSP指定国の工場を組み込んで利用している。これまでのGSPプログラムは2017年12月31日付で失効となった。しかし、再度制定された現在では、輸入業者は、2018年1月から3月に輸入したGSP製品に関して関税の払い戻しを申請することが可能であり、一部の輸入に対しては2021年までGSPの下での無関税ステータスを利用することも可能である。
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