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ニュース&イベント: コーポレート/ファイナンス/M&A関連情報

関税とM&A取引 - 変容するM&Aリスク

12.18.25

変動する関税政策は、企業価値評価や取引スケジュールに、ますます大きな影響を与えています。輸入依存度が高い企業、サプライチェーンが海外に集中している企業、関税に敏感な顧客基盤を持つ企業は、より強い価格圧力と頻発する遅延に直面しており、関税の分析はM&Aを計画する上で、初期段階における核心的な課題となっています。

その結果、デューデリジェンスの範囲は大幅に拡大しています。買い手は、複数の関税シナリオをモデル化し、サプライヤー集中リスクを評価し、さらに対象企業が関税の変更に応じて調達や製造を調整する能力を検証しています。法務デューデリジェンスでは、商品を関税上どのように分類してきたか、誰を輸入者として指定しどのように輸入をしてきたのか、過去にどのように緩和策を講じてきたのかを確認することが一般的です。これらの分野での不手際は、クロージング後の予期せぬコストの負担やコンプライアンス違反の制裁といった形で、法的責任を生じさせるおそれがあります。

関税による不確実性により、取引リスクの分担の仕方も変わりつつあります。当事者は、契約締結からクロージングまでの間に生じる関税の変更をどのように扱うかについて、より詳細な株式譲渡契約書(売買契約書)を交渉しています。従来、市場全体の変動のようなリスクは、「重大な悪影響(Material Adverse Effect/MAE)」条項の対象外とされることが一般的でしたが、大幅な関税変動が契約解除の正当化事由となるかを明確化するために、より積極的に交渉されるようになりました。買い手は、下方リスクから身を守るため、価格調整条項、アーンアウト、関税関連の補償条項(Indemnities)にますます依拠する傾向にあります。

こうした環境下では、取引チームは、サプライチェーンの対応力やコンプライアンス体制を含む関税リスクを積極的に評価し、明確な契約上の保護規定を交渉しなければなりません。取引価値を維持し、クロージング後に多額の予期せぬ費用負担が発生することを回避するには、徹底的なデューデリジェンスと強固なリスク配分メカニズムが不可欠となっています。関税に関する問題を適切に評価するため、交渉の初期段階から弁護士を関与させることが極めて重要です。

増田・舟井法律事務所は、米国でビジネスを展開する日本企業の代理を主な業務とする総合法律事務所です。
当事務所は、シカゴデトロイトロサンゼルス、およびシャンバーグに拠点を有しています。

© 2025 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。