Skip to Main Content
ニュース&イベント: クライアント・アドバイザリー

米国最高裁、FLSAの適用除外(Exemption)に関する 証明度の基準を明確にする

3.20.25
関連業務分野 訴訟

近時、米国最高裁判所が、E.M.D. Sales, Inc.対Carrera事件(E.M.D. Sales, Inc. v. Carrera, No. 23-217, 604 U.S. ____(2025))で下した判決により、雇用主が公正労働基準法(FLSA)の適用除外(Exemption)の申請に際して証明しなければならない証明度の基準に大きな影響が生じることになりました。本事件では、合衆国法典第29編第207条(a)(1)(U.S.C.§207(a)(1))に基づくFLSAの時間外労働規制が適用除外となるために、雇用主が証明しなければならない証明度の基準に焦点が当てられました。

本事件において、食品販売業者であるE.M.D. Salesは、同社に務めるセールスパーソンの何人かは、合衆国法典第29編第213条(a)(1)(29 U.S.C.§213(a)(1))で規定される「外回りの営業職(outside salesmen)」に該当するため、時間外労働手当の支払は免除されると主張しました。しかし、第4巡回区控訴裁判所は、E.M.D. Salesが、かかる適用除外の主張を「明確かつ説得力のある証拠(clear and convincing evidence)」に基づいて証明することができなかったとして、地方裁判所が同社に対して下した判決を支持し、適用除外を認めませんでした。すなわち、本事件で控訴裁判所は、民事訴訟において通常適用される「証拠の優越(preponderance-of-the-evidence)(すなわち、事実でないというよりは事実らしい)」の基準よりもはるかに高い立証責任(burden)を課す証明度の基準を適用しました。

最高裁は、Kavanaugh判事によって起草された満場一致の意見に基づき、第4巡回区控訴裁判所の判決を覆し、雇用主が、時間外労働または最低賃金に関するFLSAの規定の適用除外を主張するには、より高い「明確かつ説得力のある証拠」の基準ではなく、「証拠の優越」の基準を満たしていればよいと判示しました。より高い基準の適用を求める明示的な法令または憲法上の規定がない限り、自動的に下位の基準が適用されます。最高裁は、雇用主がこのより低い基準を満たすことができるか否かを判断するため、本事件を第4巡回区控訴裁判所に差し戻しました。

本判決でなされた明確化は、雇用主にとって好ましいものです。雇用主が「外回りの営業職(outside salesmen)」に対する適用除外等のFLSAの適用除外を主張する場合は、従業員が適用除外基準を満たしている可能性が満たしていない可能性よりも高いことだけを証明すればよいということになります。最高裁は、本判決が下されたことによって、FLSAの適用除外に関する事例は、証拠の優越の基準が適用される雇用法の他分野(公民権法第7編(タイトル・セブン)の請求等)における事例と同様に判断されると指摘しました。

この相対的に低い基準は、雇用主にとって有利ではあるものの、企業は引き続き内部規則と文書化のプラクティスを見直し、必要に応じて更新すべきです。従業員の役割・職務内容・就業場所を明確にした記録の作成と維持を徹底することも不可欠です。そのような記録は、適用除外の主張を裏付けるだけでなく、潜在的な訴訟における重要な証拠としても役立ちます。

本稿の内容またはその他訴訟もしくは雇用に関する問題についてご質問がございましたら、担当弁護士または訴訟部門または雇用/労働法/福利厚生部門のメンバーまでご連絡ください。

増田・舟井法律事務所は、米国でビジネスを展開する日本企業の代理を主な業務とする総合法律事務所です。
当事務所は、シカゴデトロイトロサンゼルス、およびシャンバーグに拠点を有しています。

© 2025 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。