米国における倒産手続の申立件数は増加傾向にあります。2024年9月までの1年間で、個人および企業の倒産手続の申立件数は16.2%ほど増加しました。驚くことに、企業による倒産手続の申立件数は、33.5%も増加しました。これは、依然として拡大を続ける経済状況下でのことです。通常、倒産手続を開始した企業は、無担保債権の証拠(unsecured proof of claim)を届け出た債権者に対して0~5%程度の配当金を支払いますが、それ以上の金額の回収は可能なのでしょうか? 貴社が、ほとんどの債権者が知らない多くの適用可能な倒産の例外事由のいずれかに該当する場合は、その答えは「可能」となります。つまり、ほとんどの債権者は、倒産手続の申立てを行った顧客から正当に支払われるべき金額を受け取っていないということです。
この記事では、顧客が倒産手続の申立てを行った場合に、ほとんどの企業が認識していない、いくつかの回収アプローチについて簡単にご説明します。一旦倒産手続の申立てがなされてしまえば、ほとんど、または債権届出の準備を行うに足る金額すら回収することができないという時代遅れの誤った認識のままでいると、債権者は不必要にお金を失うことになります。
最初に、債権者は、特定の状況下において、取戻請求権に関する通知(reclamation notice)を発行したり、商品の輸送の停止を求めることができます。取戻請求権を行使した場合において、倒産手続を開始した者が当該商品を返還しない場合には、債権者は商品代金の全額を受け取る権利を有することになります。商品の輸送を実際に停止し、債権者が商品を回収した場合には、商品の再配送のために倒産手続を開始した者から商品代金の全額が債権者に支払われる可能性が高いでしょう。
また、倒産手続の申立ての20日前までに納品された商品について、債権者は商品代金の全額を受領する権利を有します。 倒産手続の申立ての後に商品が納品された場合はどうなるのでしょうか? この場合も、債権者は商品代金の全額を受領する権利を有します。債権者がすべきことは、倒産裁判所に適切な申立てを行うのみです。 もちろん、倒産手続を開始した者は、通常、このような情報を債権者に自主的に提供することはありません。したがって、債権者は自らの権利を認識し、それらを主張する必要があります。
倒産手続を開始した者の重要な取引先や海外の取引先も、適切な対応を行えば全額の支払いを受けることができる可能性があります。倒産手続を開始した者の再編のために貴社の商品が必要である、または米国の裁判所が海外の企業に対して管轄権を有しないことを理由として、過去の納品分についても全額支払われる可能性があります。 また、倒産手続を開始した者と貴社との間で「未履行契約」と呼ばれる特定の種類の契約が締結されており、倒産手続を開始した者が貴社に対して商品やサービスの提供の継続を希望する場合には、倒産手続を開始した者は貴社の未履行契約を引き受けた上で、倒産の申立ての前に生じた未払代金を含む過去の債務不履行をすべて解消する必要があります。
貴社が、倒産手続を開始した者との間の契約に関して担保権を有する場合、貴社は倒産手続においてより有利な立場に立つことができ、少なくとも請求書に記載の商品の価格までは全額支払いを受けることができます。
出荷の遅延や拒否も、支払いを受ける可能性を高めることにつながり得ます。もちろん、倒産手続の申立てによる自動停止を考慮する必要があり、場合によっては出荷が必要になる可能性もあります。
最後に、債権者は、最後の手段として、少なくとも債権届出を行うべきです。これにより、倒産手続において、債権者への配当に参加することができます。
これらのアプローチや、顧客の信用リスクを最小限に抑えるためのプランの策定についてご質問がある場合は、ラインホールド・クレイマーまたは増田・舟井法律事務所の他の弁護士までご連絡ください。
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