企業透明性法(Corporate Transparency Act)(以下「CTA」といいます)は、企業の所有者に関する透明性を高めることにより、違法な金融活動を防止することを目的として、2024年1月1日に施行された連邦法です。CTAにより、特定の会社は、同社の「実質的所有者(beneficial owners)」に関する情報を米国財務省の金融犯罪取締ネットワーク(Financial Crimes Enforcement Network)(以下「FinCEN」といいます)に開示することを義務付けられています。「実質的所有者」とは、直接または間接的に、かかる会社の所有権の25%以上を保有するか、あるいはかかる会社に対して実質的支配力を行使する者を指します。多くの場合において、会社は罰則を回避するために、2025年1月1日までに実質的所有者情報をFinCENに報告することを義務づけられていました。
制定当初から、多くの人々が、CTAは、政府による過剰な取締りの例であり、小規模な企業にとっては過度な負担であると主張してきました。しかし、CTAによる報告義務は、企業に対して限定的な義務を課す単純な管理業務にすぎず、最悪の事態を想定した場合、マネーロンダリングや他の金融犯罪を防止するためのわずかな代償であると主張する者もいます。
テキサス州東部地区連邦地方裁判所は、前者の主張に同意し、2024年12月3日に、アメリカ全土に効力が及ぶ仮差止命令を下し、当該命令において、CTAにより要求されていた2025年1月1日までの実質的所有者情報の提出期限を遵守する必要がないこと等が明記されました。この決定に対して、米国政府は速やかに控訴しました。
控訴審での判断にかかわらず、本件は、さらに最高裁判所へ上告される可能性もあります。また、2025年1月の新政権の発足に伴い、CTAの施行が制限または縮小される可能性もあります。本件に関する最終決定は、2025年以降となる可能性がありますが、各企業は、差止命令が覆された場合に迅速に対応できるように、グッドプラクティスの一環として、実質的所有者情報を把握しておくことをお勧めいたします。最終決定がなされるまでCTAの行き先は不明です。
増田・舟井法律事務所は、米国でビジネスを展開する日本企業の代理を主な業務とする総合法律事務所です。
当事務所は、シカゴ、デトロイト、ロサンゼルス、およびシャンバーグに拠点を有しています。
© 2024 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。