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厳しい雇用情勢の中、「競業避止義務」 訴訟が活発化

7.19.22
関連業務分野 訴訟

過去10年から15年の間に、多くの米国企業が、販売や技術サービスを担う主要な従業員の雇用契約に「競業避止義務」や「勧誘禁止義務」を導入してきました。雇用契約の「競業避止」規定は、典型的には、従業員が元の雇用主の直接の競合他社に就職することを1年から2年の間禁止するものです。通常、競業避止義務は、元従業員が元雇用主のもとで働いたのと同じ地域で競合他社に就職する場合にのみ適用されます。さらに、雇用契約の「勧誘禁止」条項は、通常、元従業員が新しい雇用主のために元雇用主の従業員、顧客、またはサプライヤーを「勧誘」することを禁じています。雇用契約の「勧誘禁止」条項も同様に、雇用後1年から2年の間課されます。

元従業員の勤務期間や退職の理由など、様々な要因によりますが、元従業員が特に敵対関係の強い競合他社に転職するために退職したことが判明した場合、企業はこの種の「制限的」雇用条件を行使しようとすることがほとんどです。このような事態が発生した場合、企業は通常、元従業員(契約違反)と新しい雇用主(契約の妨害)の両方を訴えることになります。

ほとんどの場合、この種の訴訟は、(元)従業員と新しい雇用主が、(元)従業員が特定の顧客リストに「勧誘」する権利を制限することに合意するか、(元)従業員の事業活動が地理的に制限を受ける期間を、雇用契約で指定する期間よりも短縮することに合意すれば、すぐに解決することが可能です。 例えば、(元)従業員は1年間ではなく9ヶ月間スミス社と接触しないとか、2年間ではなく1年間はアトランタで営業電話をかけないといったことがそれに該当します。言い換えれば、紛争の当事者は通常、(元)従業員とその新しい雇用主から、従業員が特定の顧客や特定の地域の顧客に雇用契約で指定された期間よりも短縮された期間勧誘を行わないという執行可能な約束を取り付けることで、和解できます。

しかし、米国では極めて厳しい雇用情勢が続いているため、競合他社による従業員の「引き抜き」が激化しています。雇用ボーナスや報酬の大幅アップが約束されているため、職場満足度が高い長期にわたって在籍している従業員でさえも引き抜かれてしまうのです。同時に、新しい雇用主は前の雇用主の雇用契約書に目を通し、雇用後の制限に法的な不備がないかを調べます。そして、元雇用主は、従業員や元従業員に雇用後の契約義務を執行するつもりであることを明確にすることで、経験豊富な従業員が勧誘を受けて他社に転職するのを防ぐことに力を注いでいます。このように、従業員が現在の仕事を辞めて競合他社に転職するのを防ぐ(一方で、元従業員は元の同僚にコンタクトを取り、会社を辞める気がないか様子をうかがう)ための「戦い」が、米国企業が雇用後の競業避止義務や勧誘禁止義務の履行を求めて訴訟を起こし、その契約条件を守るために多くの時間や費用を使う原因となっています。また、多くの企業は、最初の従業員が退職したときに反撃しなければ、競合他社が次々と従業員を「引き抜き」続けることを恐れて、これらの訴訟を現実的な条件で和解することに消極的になっているのです。

こうしたことから、企業はしばしば、企業にとって最も価値の高く、阻止すべき従業員の一斉退職を防ぐために徹底的に戦うことを競合他社に示さなければならないと考えるようになります。雇用契約の執行可能性を守ることは、多くの場合、一人の元従業員の転職による実際の結果を検証することよりも重要となっているのです。つまり、この種の訴訟は増加傾向にあるだけでなく、競争の激しい雇用市場によって利害関係が高まっているため、提訴や法廷での攻撃防御にかかる費用も高くなっているのです。

この傾向は、各州の議会や裁判所が、雇用後の制限をどのように、どれくらいの期間適用するかについて、異なる規則やテストを策定していることも一因になっています。多くの州裁判所は、雇用後の「競業避止義務」による制限を好まず、合理的な「勧誘禁止」による制限をより積極的に執行する傾向にあります。しかし、この対応は、必ずしも一貫性がなく、明確でもないため、複数の州で事業を行う企業にとって、全米のすべての裁判所が一貫した内容で執行できる雇用契約書を作成することは特に困難な状況となっています。

企業が雇用契約の執行可能性を検討するタイミングは、それを実際に執行するための法的措置の必要性が生じる前となります。また、ある州の裁判所が元従業員に対する契約条項の執行を認めたからといって、他の州の裁判所も同じように雇用後の条項の執行を決定するとは限りません。自発的にせよ、非自発的にせよ、裁判所に出向く前に、弁護士に相談することで、雇用戦略における当て推量を排除することができます。

© 2022 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。