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メキシコの労働法改正-同国で事業を展開する日本企業において即時対応が必要となる可能性

6.23.21

概要
 

メキシコで事業を展開している日本企業は、同国が新労働法の施行を急ぐ中、人員に関して直ちに措置を講じなくてはならない可能性があります。2021年4月23日、人材派遣規制を改正する法律が官報により公布されました。新労働法は、労働者を他人又は他の法人の利益のために提供し、又は利用させる行為として定義される「アウトソーシング」を明示的に禁止するものです。この改正法により、メキシコで労働力をアウトソーシングしながら事業を展開している日本企業においては、人員構成を大幅(かつ迅速)に変更しなくてはならない可能性があります。

1. 背景

メキシコ法は、同国で事業を行っている企業に対し、同国の従業員に税引前利益の10%を分配することを義務付けています。当該義務は、一般的に「利益分配(Profit Sharing)」又は「PTU」と呼ばれます。

このような利益分配に関連する問題を回避するため、メキシコで事業を行っている国内外の多くの投資家は、従業員を(Manpower社のようなアウトソーシング会社を通じて)アウトソーシングするか、又は「内部的な」アウトソーシング構造を構築することで対応してきました(後者のアウトソーシングは、しばしば「インソーシング」と呼ばれます)。インソーシングは、「(1)事業会社」及び「(2)サービス会社」という2つの独立したエンティティを設立することにより実行されます。事業会社は、従業員を有さず、収益の回収を含め、すべての事業取引を遂行する目的で運営されます。一方、サービス会社は、適切な人材の雇用を行い、一般的に当該サービス会社の総費用(従業員の雇用に関連して発生する費用を含む)及び適当なマークアップ(利幅)に基づき計算される報酬を得て、事業会社に対し、人員、管理及び他の関連サービスを提供します。これにより、サービス会社の年間利益が管理可能となり、メキシコの従業員との利益分配の相当程度の削減を可能としてきました。

この「デュアルカンパニー」メカニズムは、メキシコにおいて長い間議論の的となっていたものの、基本的に合法的かつ有効であると考えられてきました。しかしながら、近年においては、このようなアウトソーシングの仕組みが濫用され、従業員や税務・社会保障当局を欺くための仕組みとして利用されるに至っています。

2. 改正点

上述の「労働法改正」は、会社(又は個人)が他の会社(又は個人)に自らの労働者を提供し、他の会社(又は個人)の利益のために利用させるすべての取引として定義されるアウトソーシングを禁止します。本改正には、メキシコで「pagadoras(支払者)」として知られる会社の利用禁止も含まれます。専門業務もしくはサービスのアウトソーシングは、当該業務又はサービスが委託者であるエンティティの事業目的又は主たる経済活動の範囲内にないこと、及びその他いくつかの要件(受託者の登録及びライセンス要件を含む)を満たすことを条件に、引き続き許されます。また、この労働法改正は、同一企業グループ内における企業間のサービス及び業務の提供を制限するものでもあります。

この労働法改正は、要するに、現在メキシコで用いられている人員のアウトソーシングのメカニズムを無くすことを目的とするものです。労働法改正は、違法となる現行のアウトソーシングや「インソーシング」の終了に関するメカニズムとガイドラインを提供し、社会保障関連の調整について定め、違法なアウトソーシング取引に対する罰金、制裁、および税制上及び社会保障上の負担(刑事訴追に至る可能性もある)を規定しています。例えば、ある会社が人員のアウトソーシングを行っていることが判明した場合、受託者及び受益者(顧客)の双方にそれぞれ179,240ペソから4,481,000ペソ(8,962米ドルから224,050米ドル)の罰金が科されることがあります。

また、この労働法改正は、利益分配概念に関連して生じる反対意見や懸念に対処するため、メキシコの各従業員が受け取ることのできる利益分配の上限を定めました。これは、各従業員の3ヵ月分の給与又は過去3年間に受け取った利益分配額の平均のいずれか高い方とされています。

3. 重要期日

労働法改正の一部(税制に関する事項等)は2021年8月まで施行されない一方で、アウトソーシングの禁止・制限については2021年4月24日付で施行されました。この一連の法改正は労働法改正と呼ばれるものの、税制・社会保障に関する事項をも含んでいます。

4. 該当企業が講じるべき措置とは?

今般の労働法改正は、メキシコで事業を行うすべての企業に対し、その内部構造の見直し(登録済の「事業目的」に関する付属定款(bylaws)の見直し及び登録済の主たる経済活動に関連する税務その他の登録及びライセンスの見直しを含む)のほか、関連当事者を含むサービスサプライヤー及び顧客との取引関係と契約の見直しを要求するものであります。この見直しは、労働法改正の要素の多くが現行のメキシコにおける法、規制及び要件と矛盾しているように見受けられることに鑑みて、分野横断的に実施する必要があるでしょう。メキシコで人員のアウトソーシング/インソーシングを利用している日本企業においては、労働法改正が業務に及ぼす影響を直ちに評価し、コンプライアンスのための行動計画を策定すべきです。

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