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ニュース&イベント: クライアント・アドバイザリー

トランプ大統領発表の「アメリカ再開(Opening Up America Again)ガイドライン」の下での事業再開ガイドライン【Part 6】

5.19.20

概要
 

2020年4月16日(木)、トランプ大統領は、「アメリカを再開させるためのガイドライン(Guidelines for Opening Up America Again)」(「本ガイドライン」)を発表しました。

本ガイドラインは、州政府・地方自治体の機関が経済活動の開始を促し、人々が職場復帰に備え、および雇用主が業務活動の再開に際して直面する課題に対処するために、支援し、指針を示すものです。

当事務所では、雇用主が各自の業務再開プランを立てる際に考慮すべきビジネス・人事・安全関連事項について最新情報を提供するために、引き続きクライアント・アドバイザリーを発行してまいります。

本稿では、次の観点から「職場への復帰」について考察いたします

  • 会社が、業務を再開するために「一時的無給休暇(furlough)」を言い渡していた従業員を呼び戻し、オンボーディング手続(onboarding)を行うときの心得

何かご質問などございましたら、貴社の担当弁護士までご連絡ください。

会社(雇用主)が業務を再開し、従業員を職場に呼び戻すには、従業員にとってスムーズな手順を踏み、政府機関が発行する数々の法律、規則およびガイダンスに従い、会社の法的責任を軽減するために考慮すべきことがあります。

  1. 一時的無給休暇(furlough)を言い渡していた従業員を職場に呼び戻す。

 職場に呼び戻されなかった従業員が、差別、報復または連邦・州・地方自治体の法律の違反を理由に会社(雇用主)を訴える可能性があります。したがって、次のことをお勧めします。

  • 従業員の保護されるべき特性(人種、出身国、年齢など)を理由として、あるいは(ファミリーズ・ファースト・コロナウイルス対策法(Families First Coronavirus Response Act)の下で、緊急有給病気休暇(Emergency Paid Sick Leave)や緊急家族介護休暇法(Emergency FMLA)の適用を申請したり、認可を得たり、または会社の安全健康問題について苦情を申し立てたりするなど)従業員が保護されるべき行為に従事していたため、会社が従業員に報復したという根拠により、従業員を職場に呼び戻さなかったと強く訴えてくる可能性・リスクがないか、分析してみる。

  • 非差別的かつ合法的な事業上の理由に基づき、どの従業員をどのような手段で呼び戻すか決定する計画を立て、それを書面化し、実施する。

  • 会社が合法的な事業上の理由に基づいてかかる決定をしたことを証明するために、マトリックス表を作成する。縦の欄に、一時的無給休暇(furlough)を言い渡した従業員の名称を記載し、横の欄にかかる決定を考慮した要因を記載する。要因項目としては、(年功など)会社での勤務年数、最近の業績評価、遅刻・欠席の回数、異なる機械の操作スキル、または異なる職務の遂行能力などを記載できる。会社は、当該要因を満たした順番で、従業員を職場に呼び戻し、かかる決定プロセスを文書化しておく。

  1. オンボーディング(Onboarding): 

 通常、人事・労務管理分野では、オンボーディングという言葉は、雇用主が新入社員を会社で歓迎し、受け入れ、諸手当制度の加入など雇用手続に順応させるプロセスを意味します。

 オンボーディング手続には、新入社員が入社したときに会社が実施する措置と同様のものが多く含まれることがあります。そしてその大部分が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の回避対策として実施される可能性があります。

  • 職場に復帰した従業員を歓迎し、会社の従業員規定(Employee Handbook)に含まれる重要規則について知らせ、各従業員が適切な諸手当を受けられるように必要な書類手続を完了させる。

  • PTO(有給休暇)や病気休暇の日数を拡大したり、またはまだ取得権のない休暇の前借りを許可した会社も少なくないだろう。そのため、新たな従業員規定を作成・配布し、従業員の有給休暇・病気休暇が付与されているか否かも含め休暇日数を確認し、記録し、通知する。また、退職理由に関わらず、従業員の退職時には、当該従業員が取得条件を満たしている有給休暇について、会社は、未消化分の賃金を従業員に支払わなければならない。その場合、会社が従業員規定により判断するよりも、準拠法である州法を遵守して判断することが重要となる。

  • 出勤して、同僚と同じ職場で働くことを危惧するため、または(年齢や基礎疾患などを理由に)ウイルス感染を受けやすいとみなされるグループに属するため、自宅でリモートワークを継続することを要求する従業員に返答(対応)する。

  • 会社が、出社を危惧する従業員にリモートワークの継続を許可する場合でも、または継続して職場への復帰を拒否したり、もしくは怠ったりする従業員は、解雇も含む懲戒処分を受ける可能性があると通知する場合でも、いずれの場合も、会社は、一貫した規定を設け、実施する。

  • 会社は、ウイルス感染を受けやすいとみなされるグループに属する従業員に提供する便宜について、一貫した規定を設け、実施する。かかる従業員には、COVID-19にかかりやすいとされる65歳以上の従業員が、糖尿病やガンなど基本疾患を持っていなくても、含まれる。ただし、年齢を理由とした便宜の提供は、雇用における年齢差別法(Age Discrimination in Employment Act)により、雇用主に義務づけられたことではない。

  • リモートワークをする従業員については、リモートワーク規則を設け、配布し、実施する。さらに、従業員と会社間のリモートワーク合意書を作成し、従業員の署名を得る。同合意書には、かかる従業員のリモートワークを監督するマネージャーの主要義務およびリモートワーク従業員が行う、測定可能かつ有意義な任務における主要義務についても明記する。

  • 固定給(サラリー)を支給している適用除外従業員(exempt employees)に対して、適用対象従業員(non-exempt)が行うべき職務を過度に行わせ、適用除外従業員の地位が適切なものでなくなってしまったり、またはアウトサイド・セールス担当者に内勤の職務を行わせ、時間外手当の受給資格のあるインサイド・セールス担当者に転換してしまったりしないように、連邦公正労働基準法(Fair Labor Standards Act)と州法による賃金・労働時間に関する法律を遵守する。

 従業員の職場復帰およびオンボーディング手続も含め、的確なプランニングを行うことで、会社は、かかる手続を円滑に進めるだけでなく、法的な紛争および責任を回避することができるはずです。

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