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ニュース&イベント: 雇用/労働法/福利厚生関連情報

従業員の引き抜き禁止条項

3.22.19

概要

カリフォルニア州の裁判所は、ある一部の例外を除いて、従業員が退職後に競合他社へ転職したり、あるいは元の職場の顧客を勧誘したりすることを禁止する雇用契約書上の条項は違法であると解している。雇用契約書によっては、元の職場の同僚を勧誘し退職させる(従業員の)引き抜き禁止条項を含むものもあるが、カリフォルニア州で下された最近の判決では、こうした条項も、従業員の職業、取引および事業を制限することを理由に違法であるとされた。

2018年11月2日、AMN Healthcare, Inc. v. Aya Healthcare Services, Inc.訴訟において、カリフォルニア州控訴裁判所は、派遣看護師を専門に扱う人材スカウト会社に勤めるリクルーターに対して適用された元職場の同僚の引き抜き禁止条項は、リクルーターの取引を制限するため「違法」との判断を下した。本訴訟における判決によると、AMN Healthcare, Inc.に勤務する全リクルーターは、雇用の条件として機密保持契約に署名させられた。当該機密保持契約には、「AMN退職後、1年間はAMNの“従業員”を勧誘してはならない」とする元職場の(従業員の)引き抜き禁止条項も盛り込まれていた。ここで定義されている「従業員」には、AMNに登録され、派遣されていた派遣看護師も含まれていた。当該裁判所は、このような条項は元リクルーターの職業、取引および事業を制限するため、カリフォルニア州法である「事業および職業規程(business and Professions Code)」(以下、同規程は条数のみを記載する)の16600条に違反するとの判決を下した。当該リクルーター達は、医療施設に短期間ベースで派遣看護師を派遣する業務に従事しており、同僚勧誘禁止条項は、彼らが自ら選んだ職業を本質的に制限すると判断された。

一方、AMN訴訟における判決が出された時点では、人材スカウト業に従事している従業員に関してのみ、元職場の(従業員の)引き抜き禁止条項が違法とされるのか否かが明確ではなかった。しかしながら、連邦地方裁判所がBarker v. Insight Global訴訟に関して2019年1月11日に下した判決では、リクルーターとは無関係の要素を理由に元職場の同僚勧誘禁止条項を違法とし、AMNでの判決を支持する形をとった。Barker訴訟では、Insight Globalで勤務していた元役員が、自らの契約書に盛り込まれた(従業員の)引き抜き禁止条項は16600条に違反するとして訴訟を提起した。同役員は人材スカウト会社に勤務していたものの、役員の立場にあったため、実際にスカウト業務を行っていなかった。Insight Globalは、AMNの判決は実際に人材スカウト業務に従事している従業員のみに適用されるべきであると主張したが、裁判所がそれ受け入れなかったのは特記すべき点である。

今後、カリフォルニア州最高裁判所やカリフォルニア州控訴裁判所において、更なる判決が下される可能性があるため、カリフォルニア州が(従業員の)引き抜き禁止条項に関してどのような基準を最終的に設定するのかは現時点では未定である。一方で、カリフォルニア州の裁判所は、従業員の職業、取引および事業を制限するような勧誘禁止条項を違法とみなす方向に向かっていると言えるかもしれない。(従業員の)引き抜き禁止条項を利用しているカリフォルニア州の雇用主においては、それに伴うリスクを評価するために弁護士に一度相談されることをお勧めする。さらに、そのような禁止条項が含まれている契約書には、違法と見なされた場合に裁判所による書き直しを可能とする「保留条項(saving clause)」を盛り込むこともお勧めする。いずれにしても、まずは社内の人事部において現行の契約書などを確認し、変更が必要かどうか検討していただきたく思う。

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