日本でも近年セクシュアルハラスメント(以下、「セクハラ」)がメディアを騒がせているが、その突破口となった事件が、やはり米国ハリウッドの某有名プロデューサーによるセクハラ事件だろう。続々と被害者の女性たちが名乗りを挙げ、企業で高い地位に就きながらも、結局業界を追われる結末となった。しかし、米国のビジネス業界において、セクハラは決して新しい問題ではない。過去にも米国に子会社を持つ日本企業が訴訟の対象となった事実もあり、連邦政府だけでなく州の機関による厳しい施政方針も実存する。
現にカリフォルニア州では2004年に、企業向けセクハラ対策として、一般にAB 1825として知られる議会法案が採択され、50人以上の従業員を持つ会社は、スーパーバイザー(管理の地位にある者)の地位に就く従業員に最低2時間のセクハラ防止研修を2年に一度施すことが義務付けられた。更に2017年には、ゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダー等を含む性的マイノリティの人たちへ対する性的嫌がらせ防止対策を教育研修に盛り込むことが義務付けられた。
現在、新たな法案(SB 1343)が上院により審議されている。この法案が採択されれば、5人以上の従業員を持つ事業主が、セクハラ防止研修の実施義務の対象となる。また、セクハラ防止研修が義務付けられる従業員はスーパーバイザーだけではなく、パートタイムおよびテンポラリー・スタッフ(派遣社員)を含む全ての従業員が対象となるため、スーパーバイザー以外の従業員が社内または社外でセクハラ行為をした場合にも、事業主が賠償責任を問われる可能性が否めない。ただし、行政機関が提供するオンライン・ビデオによる研修が可能となるため、事業主による過度なコスト的負担の心配はない。
近年、#MeTooやTime’s Upなど、女性の社会的地位向上に貢献することを名目とした社会運動、およびセクハラ被害者たちに及ぼす影響の重大性を企業が軽視していると非難するような社会運動が活発になってきている。今後、企業側に出来ることは、従業員ハンドブックに会社のセクハラ対策を明記し、前述の法案が採択された場合は速やかに全従業員へ新法の重要性を告知すると共に社内でのセクハラ防止研修を実施することである。
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