融資関連書類の交渉の中で、貸主と借主の間でよく問題になりがちな争点として、環境問題に関連するリスクをどのように公平かつ適切に分担するかという問題が挙げられます。
出発点として、借主と貸主の間では、貸主に起因する事項を除き、借主が当該不動産に関連する全ての環境責任を負うべきです。借主は不動産を所有し、直接的又は間接的に管理しているのに対し、貸主は不動産所有者への融資を行うという関与の仕方をしているに過ぎないためです。したがって、貸主が借主に対し、貸主に起因する事項以外の全ての環境問題に関する環境補償(environmental indemnity)を要求することは、公平かつ適切であるものと考えられます。
しかし、当該物件で環境問題が発生した場合に、借主は融資関連書類上のデフォルトとみなされるべきなのでしょうか。これは、場合によります。例えば、借主が放射性物質を当該物件に運搬し、投棄した場合、有害物質を当該物件に放出しないという契約に明らかに違反するため、環境補償に基づく義務が発生し、デフォルトが認定されるべきです。
一方、借主が知らない間に、第三者が有害物質を放出しており、借主が商業的に合理的な努力をもってこれを防止しようとしていた場合、借主は貸主との間の契約に違反していません(ただし、環境汚染が融資関連書類に従って是正される場合に限ります。)この状況では、環境汚染が存在し環境補償の対象となっていても、借主は融資関連書類上のデフォルトにはなりません。
このアプローチにより、貸主は環境補償によって責任追及から保護され、借主は自らの制御不能な事由によってデフォルトに陥ることはありません。一方、環境汚染に対処するに最適な立場にある当事者、すなわち、物件所有者である借主は、融資関連書類に基づき汚染の是正を義務付けられることになります。
これが、貸主及び借主の双方にとって公平かつ適切な結果であるといえます。
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