Skip to Main Content
ニュース&イベント: ビジネス移民法ニュース

公的扶助を利用する可能性のある外国人を対象とした新規則の導入 - 雇用主が受ける影響とは?

2.17.20
関連業務分野 移民法

米国国土安全保障省は2020年2月24日、雇用主およびその非移民ビザ従業員に重大な影響を及ぼす新規則の施行を開始する。これによって「公的扶助」の意味する定義が拡大される。2019年10月に一度施行されたところを各地の連邦地方裁判所によって差し止められていたものだが、今年1月になって米最高裁判所がこれらの差し止め命令を覆し、政府に施行を許可した。イリノイ州は唯一の例外で、この記事の執筆時点でこの規則は禁止されたままである。この新規則の適用対象は2020年2月24日以降の消印をもって提出された嘆願書・申請書となる。

2020年1月30日、米国移民局 (USCIS) がこの新規則を施行すると発表した。これにより、公的扶助を利用する可能性を理由として移民局が外国人の入国拒否を決定する際の判断基準が拡大される。

「移民国籍法」(Immigration and Nationality Act (INA)) によると、外国人が入国後公的扶助を受けるであろうとみなされた場合、その外国人は入国を拒否されるか、または移民法上の利益の一部を受けられなくなるとしている。今回の新規則はこの「公的扶助」の定義を拡大し、かかる判断を下す担当係官に非常に幅広い裁量権を与えることになる。新規則は、外国人が(アメリカ国外または国内で)ビザを申請する場合、永住権申請のため国内でステータス変更を申請する場合、そして本人が実際に入国しようとする場合のすべてに適用される。

H-1B、L-1A、L-1B、またはF-1からH-1Bへの変更などを含め、非移民ビザの従業員が滞在延長やステータス変更を申請する際、雇用主は、移民局に嘆願書I-129を提出するにあたり、該当する従業員に公的扶助に関して広範な質問をすることが必要となる。これらの質問には、過去に連邦、州政府もしくは市町村から生活扶助費を受けたことがあるか、また連邦補足的保証所得(SSI)、フードスタンプ、住宅補助手当(セクション8)あるいは連邦政府からの医療費補助(メディケイド)などを受けたことがあるかといった確認事項が含まれ、これはフォームI-539の提出により滞在延長・ステータス変更を申請しようとする非移民扶養家族についても同様である。

さらに非移民ビザ従業員が雇用に基づく永住権を申請中で、最終段階(フォームI-485の提出)に差しかかっている場合、本人およびその非移民の扶養家族は、新たに「自立能力申告書」(フォームI-944)を記入・提出しなければならない。このフォームには19ページにわたり、家族全員についての情報から、収入源・負債・資産・違法な手段による収入・クレジットスコアや不利なクレジットカード歴・破産歴・健康保険加入歴・過去に受けた全ての公的恩恵・学歴・職業上の技能や免許・英語の能力に至るまでの質問が記載されている。移民局の審査官は、すべての状況と情報を考慮して申請者が公的扶助を受ける可能性があるかどうかを総合的に判断する。可能性があると判断されれば、申請は却下される。

雇用主にとって申請の却下とは何を意味するのか。法律の落とし穴やリスクについては弁護士に任せているからと、雇用主が何も知らないでいるわけにはいかない。嘆願書や申請書が却下されると、多くの場合、当事者である従業員はその時点で合法的滞在の根拠を失い、就労許可も失う。米国の雇用主は、就労許可を持たない個人を雇うことはできない。したがって従業員が就労許可を失えば、雇用主は当該従業員を解雇しなければならない。新たな嘆願書・申請書を移民局に提出するという選択が妥当かどうかは、個々のケースによって状況を吟味しなければ判断ができない。それが妥当な選択である場合でも、雇用主は貴重な労働力を突然失うという問題に直面するだけでなく、新たな申請プロセスに余計なコスト(弁護士費用、申請料、その他さまざまな雑費など)が発生し、しかもそのプロセスを経て申請が許可されるという保証はない。また、一旦外国人が公的扶助の可能性ありと判断されれば、当該個人に有利な情報を新たに提出したとしても、その判断を覆すのは容易ではないだろう。さらに、失ったステータスを再取得するためには、従業員は一度出国して自国の米国大使館・領事館でビザを取得し直してから再入国しなければならず、却下された場合のコストが加速度的に膨らんでいくことは想像に難しくないのではないだろうか。

雇用主からすれば、従業員個人だけが問題なのであって、その扶養家族が公的扶助の対象となるかどうかには関心がないかもしれない。しかし、家族のための申請が却下されると、ストレスや不安など従業員への影響は大きく、それが職務遂行に影響する可能性もある。また、家族がビザの再取得のため自国へ帰国するのに従業員本人も同行する必要性が急に生じるかもしれない。従業員がかかる費用を自費で賄ったとしても、そのために失われた勤務時間と会社の利益は取り返すことができないものとなる。

今回の「公的扶助」に関する新規則は、法律というものが雇用主にどれほど重大な影響を及ぼすかを最も顕著に表していると言える。雇用主は、新規則がもたらし得るリスクや影響について十分に理解しておく必要がある。

新規則に関するご質問は、エスター・コントレラス弁護士までご連絡ください。

(Eメール: econtreras@masudafunai.com 電話: 847-734-8811)

© 2024 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。